調乳温度を70℃以上とする根拠は?50℃や100℃ではダメなのか!?調べてみた

調乳温度を70℃以上とする根拠は?50℃や100℃ではダメなのか!?調べてみた

今回はミルクを作るときのお湯の温度について、一次情報に基づいて書いていきたいと思います。

お湯のイメージ

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調乳温度は70℃以上とする根拠

おすすめ!調乳用のお湯と湯冷ましの準備』でも書きましたが、調乳の温度は、世界保健機関(WHO)及び国連食糧農業機関(FAO)が策定した「乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドライン」によると、粉ミルクは70℃以上のお湯で溶かすこととなっており、厚生労働省がこれを普及啓蒙として公開しています。

このガイドラインの中では、以下のようなことが述べられています。以下の中で「PIF」という言葉が出てきますが、これは「Powdered Infant Formula:乳児用調製粉乳」、つまり粉ミルクのことです。ちょっと長いですが、大事なことが書いてあるので我慢してください(笑)

なお、このガイドラインの対象は、月齢12ヶ月以下の乳児に対する調乳に適用されるということです(p.6 1.7対象より)

一般的には、感染のリスクが最も高い乳児には、無菌状態の液状乳児用ミルクが推奨されるが、無菌状態の液状乳児用ミルクが入手できない場合は、PIFを70°C以上の温度の湯で調乳することで、リスクを大幅に減少させることができる。

FAO/WHO 専門家会議(2004 & 2006)は、E. sakazakii と Salmonella enterica が PIF 中における最も懸念される病原菌であると結論付けた。(中略)現在の加工技術では、商業的に無菌状態の PIF を製造することは不可能であるため、PIF の摂取による乳児への感染リスクが潜在する。

E. sakazakiiは、新生児の髄膜炎に関係しているとして1958年に初めて問題視され、その後、E.sakazakiiの感染事例は合計約70件報告されている(Drudy et al., 2006)。しかし、どこの国の場合でも、E. sakazakiiの感染は、実際の感染数が報告数を大きく上回っていると考えられる。E. sakazakiiは全ての年齢層で疾病の原因となる可能性があるが、乳児の感染リスクが最も高いと考えられている。

(※管理人補:Salmonellaは)乳児、あるいは特定の乳児グループにおいて感染を起こしうる菌の量は判明していないが、アウトブレイク調査による情報から、少なくも一部のSalmonella血清型では、非常に低い菌量で疾病の原因となる可能性があることがわかっている。乳児、特に感染性の高いグループ(未熟児、低出生体重児、免疫障害児)においては、これは深刻な懸念となりうる。

FAO/WHO のリスク評価(FAO/WHO、2006 年)によると、70°C 以上の湯で PIF を調乳する場合、粉乳中に存在している E.Sakazakii についてはこの温度で死滅することから、リスクは劇的に減少する。このリスク低下レベルは、授乳時間が長くなった場合(上限は 2 時間まで)や、周囲の室温が 35°Cに達する場合であっても維持されるものである。

70°C に満たない湯で PIF を調乳する場合、PIF 中に存在する E.Sakazakii を完全に不活性化させるのに十分な温度には到達していないことになる。これは以下の二つの理由から懸念される事項である:a) 少数の細菌体であっても疾病の原因となり得ること。従って、PIF 中に存在している E.Sakazakiiを死滅させることが重要である。及び b) 生き残った E.Sakazakii が PIF 中で増殖する可能性があること。こうしたリスクは調乳した粉ミルクを、冷蔵温度以上の温度で長時間放置した場合に増加する。

70°C以上の温度の湯を用いたときだけ、E.Sakazakii によるリスクは劇的に低下するのである。現在、多くのPIF 製品の取扱い説明書では PIF を 50°C 付近の湯で調乳するよう求めているが、FAO/WHO のリスク評価によれば、50°Cの湯による調乳は、調乳した粉ミルクを直ちに消費しない限り、一般的に見てリスクを最も増加させることになる

ということで(笑)、サカザキ菌やサルモネラ菌が乳児には重篤な症状を及ぼす危険があるようです。記述があいまいですが、特に製造工程や保存中に侵入する可能性のあるサカザキ菌は70℃以上のお湯で死滅するため、粉ミルクを溶かす温度もこの温度とすることになる、というのが論理的に成り立っています。

一方で、50℃のお湯では、かえって菌を増殖させてしまう事となると考えられるため、リスクが増大するとのことでこれは絶対に避けるべきものです。

このガイドラインの中には、調乳手順が書いてありますが(p.18 3.1.2 PIFを用いた粉ミルクの調乳)、こんなことは2~3時間おきの作業が必要な一般家庭ではやってられるものではありません。参考とすべきものだとは思いますが。

実際に病院などの専門機関ではどうなっているのか

実際、病院やクリニックではどのような状況なのか気になったので、調べてみました。厚生労働省から都道府県への通知文書が日本産婦人科医会にも通知されたものが公開されていました。

乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドラインについて』の別添資料より見てみましょう。

医療機関における調整粉乳の調整・管理の実態および上記ガイドラインの認知度を把握するために全国の新生児集中治療室(NICU)を有する施設を対象にアンケート調査を行った。

PIF の調乳に際しては、調乳ユニット(管理人注)を用いる方法が最も安全で効率的とされており、対象施設の約 7 割がこの方法を用いていたが、一方、施設は調乳ユニットを用いずに温度計で湯の温度を管理していた。PIF の調乳及び管理のためのマニュアルが未整備である施設が約 3 割であり、調乳担当者に E. sakazakiiに関する情報提供や教育を行っている施設は約半数であった。

調乳用の湯の温度は、約半数の施設が推奨されている 70℃以上としていた。いずれの設定温度の場合でも、一度、煮沸して冷ました湯が使われている。冷蔵庫での保管の温度は、4-5℃が過半数であったが、調乳用の湯の温度と同様に施設によってばらつきがみられた。再加温後、ミルクを児にあたえる際の温度は人肌程度を基準としており、実際には計測せず、看護師の体感での判断によることが多い。 

調乳用の湯の温度も感染リスクを大きく左右するため、WHO ガイドラインでは 70℃以上を推奨しているが、60-69℃の湯を使用している施設も多かった

今回の対象施設の多くは栄養管理室内の調乳専用室において厳しい管理基準のもとで調乳ユニットを用いて調乳を行っている。

 (注)調乳ユニットはおそらく70℃程度に保温できるポットのことだと推察されます。いわゆる、↓のような代物だと思います。我が家では使っていないですが、知り合い曰く、超便利だということです。

この報告書を見ると、えっ?と思うところがあると思います。

 「温度計で湯の温度を管理」 えっ?

 「一度、煮沸して冷ました湯が使われている」 えっ?

 「看護師の体感での判断によることが多い」 えっ?

 「60-69℃の湯を使用している施設も多かった」 えっ? えっ?

あれ?病院でもこんなもんなの?と。まぁ、最後の引用部「栄養管理室内の調乳専用室において厳しい管理基準のもとで」と書いてあるので、決して一般家庭と同じような環境ではない(=より衛生状態の良い)ところだと思うので、そのまま私たちに当てはめるのはナンセンスだと思います。しかしながら、WHOのガイドラインの周知も微妙な中、70℃以下のお湯も使っているというのには、正直驚きました。

じゃあ、95℃とかではダメなのか?

70℃以上というのは正直微妙です。電気ポットとかでは95℃設定しかないものもあるからです。ましたや、我が家のような電気ケトルやヤカンで沸かしている方々には70℃なぞというものは、上記の調乳ユニットでも使わない限りは到底無理な話です。病院のように湯温計ブスっとさすわけにもいかないでしょう。

そもそも、「70℃以上」と「以上」という表現が非常にあいまいです。超気になります。理系でなくても気になるはずです。

要するに、サカザキ菌が死滅する「最低70℃」、つまり「70℃~100℃」ということなのだろう。そういうこということを言いたいのだろうけど、温度範囲を書かないのはなぜだろう。意図があるのだろう。95℃とか100℃ではダメなのだろうか、といろいろ気になって眠れなくなってきました。

で、結論から言うと、そんなこともないようです。

いろいろ調べたのですが、明確な資料が見つかりません。かろうじてあったのが、「ほほえみ」を販売している明治の「Q&A」と「赤ちゃん相談室だより」にそれぞれ以下の記述がありました。

2)コナミルクの栄養について
70℃以上のお湯を使用しても栄養成分が大きく損失するようなことはありません。加熱に対する影響が大きい栄養成分(ビタミンCなど)については加熱の影響を考慮した製品設計としており、栄養成分が不足することはありません。

煮沸後、冷ましたお湯(70℃以上)でミルクを溶く事をお勧めしています。もし熱湯を使用する時はやけど、調乳器具の破損などの危険も考えられますので注意してください。熱いお湯でミルクを溶くことで一部の栄養が損なわれることがありますが、赤ちゃんの成長の妨げになるほど失われることはないので安心してください

と、このように書いてありました。高温下ではビタミン類や各種タンパク質が変性(壊れて)しまいます。が、そこは研究が進んでいるはず(あくまで予想)。

金属元素等でストラクチャ(構造:タンパク質のような高分子は、それ自体で実は立体構造を成していて、その構造自体が分子としての機能を規定しているのです)を強化して熱変性しにくいタンパク質を用いたり、また、高温下で変性する量を想定して、規定量以内で摂取量を満たせるようにしていると私は考えています。

ですので、明治でも「一部の栄養が失われる」としつつも「成長の妨げになるほどではない」といっているのです。つまり、95℃だろうと100℃だろうとそれほど問題にはならないので大丈夫だよ、ということです。ただ、ヤケドには注意しましょう。

ほかのメーカーには、こういった情報がなかったのは残念なことです。明治さんGood job!

明治の回し者ではないのですが(笑)、こんなこともあり、我が家は「ほほえみ」を愛用しています。というより、安売りしているからです。

ちなみに、実家の保管用や外出時にはキューブ型が非常に便利です。スティックタイプは大体100mLなのですが、ほほえみキューブは160mL作れちゃいます。これもポイント高し。

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